「最初はやたら老けた奴がいるなと思ったんだよな。」

「しっつれいよねー!」



なんてゲラゲラ笑い始める敏ちゃん。



「けど、そんな源に救われたのよ。」



ふふんと笑うと、抱き付く私を押し剥がして立ち上がった。

そして、窓辺へと歩いていく。



「…陽萌、源。」



両手を縁に付くと、私たちに背を向けて話し始めた。

その表情は真剣そのもの。



「陽萌の出向の話だけど。……やっぱり、本当のことを言うわ。」



本当の…こと?

キョトンとした私の隣で、源は腕を組んで表情を引き締めた。



「陽萌の出向の裏に何があるのか、アタシは知ってる。」

「え…?」

「知ったのは陽萌の所に遊びに行った後よ。」



それって、3月上旬の…。



「正直、アタシにとって相手が悪すぎるわ。」

「…どういう、こと?」

「一概に陽萌たちの味方はできないってことよ。元常務と専務のときのようにはできないわ。」



隣の源は黙ったまま、敏ちゃんの背中を見つめている。



「陽萌たちの味方をするには、相手に恩がありすぎるのよ。だけど、源にも恩がある。」

「…うん。」

「だからアタシは今回、中立の立場を取るわ。」