「おはよーさん。」

「おはよ…。」

「うんわっ、どないしたん!」



翌朝マンションの廊下で、会った瞬間恵也に仰天された。

首を傾げると、恵也は眉を垂れて言った。



「顔ヤバいで? 特に目元。」



と言いながら自分の目元をなぞる。


目が真っ赤に充血して、おまけに目の下には思いっ切り隈ができている。

化粧で隠しきれなかったか…。



「んー…、昨日寝れなくて…。」

「大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫。」



心配する恵也を交わして出社した。

けれど、出社しても皆に散々心配されてしまった。



「加藤さん、具合が悪かったら帰って?」



高山課長がそう声を掛けてくれたけれど、微笑みを返しておいた。

こんな風に寝れなくなるくらいなら別れなきゃよかったのに。


そう、心の中で誰かが言った。


喪失感がひどくて、昨晩は眠れなかった。

自分から手を離しておいてこの様。
何やってるんだろう、私は…。



「……。」



逆に、簡単に手を離されてしまった…。そのショックも大きかったように思う。

源…。


仕事をしていても、何をしていても、ふとした瞬間に浮かんでくるのは源のことばかり。


仕事中の無表情で冷たい源。
プライベートの優しくて甘々な源。

仕事中なのに、隙を見計らってくっついてくる源。


私の中は、こんなにも源で溢れている。