生徒総会就任セレモニー。


その後の始業式。
新入生入学セレモニー。




今年度、入学した三校の新入生が
此処、神前迎賓館に姿を見せ親元を離れ、
立派な後継者と育つことを誓約した。



新しく結成された生徒総会のメンバーは、
草薙さんの謹慎が原因で相変わらずギクシャクしたまま。




……だが……そればかりは仕方がない。


あれは学院規則に基づいて発したモノ。
それについての後悔はない。




春休み、生徒総会就任のカードが届いたあの日から
俺は覚悟を決めた。



俺が紫を全力でサポートする。



紫の手を血に染めさせないように、
汚れ役は全て俺が担ってやるんだと……。



あの日から一週間。
親友である紫の生活は急激に変化した。



現在、綾音紫の存在は学院の神様。

神は全校生徒を見守ることを求められるものの、
神の声を聞くものは何処にもいない。

故に学院のなかを歩いても、
紫は授業の時以外は声一つ発していない。



下級生や同級生・上級生までもが皆、
紫のことを神でも見るような眼差しで見つめつづけ、
お辞儀をしていく時間。


そんな生徒たちを紫はただ一言も発することなく、
笑みをたたえて見守り続けるだけ。



それが……俺たちの通う神前悧羅学院最高の
栄誉と言われる最高総の役割。



学院を導きたる神であること。



俺の役割である最高総秘書とは、
神の意を伝えるもの。


簡単に説明すれば、
それ以上でもそれ以下でもなく、
そんな……学院独特のしきたりに、
正直戸惑いを隠さずにはいられない。


よって……紫がこの学院内で言葉を発することが出来るのは、
授業中か会議中か、この『palais』での自室くらいなものだ。




「紫、入っていいか?」



今日も一日が終わり『palais』の最上階。



俺たちのプライベートルームへと帰宅すると、
早々に紫のもとへ向かう。



「どうぞ」


中から何時もと同じ調子の紫の声を受けると、
俺はアイツの部屋の扉を開く。



「よっ、お疲れさん」

「有難う、彩紫もごめんね。
 なんか汚れ役ばかりさせてる気がするよ。
 この間の草薙さんの一件だって」

「気にするなって。
 あれは俺が自分の責務として行っただけだろ。

 それより紫はどうなんだ?」

「私は平気だよ」

「そうか?」



確かに紫の見せる立ち居振る舞いは完璧で、
学院全ての生徒の手本となるに相応しい出来で普通に見る分には、
何も心配する理由など見つからないのだが……。


俺的には引っかかる部分もあって。