「紫蓮っ!!最高総、最高総秘書の前でそのような態度いけませんよ。
 紫最高総・彩紫最高総秘書この度はご就任おめでとうございます。
 
 本年度、KINGとして御二人をサポートを勤めさせて頂きます、
 高等部14年、櫻柳紫綺。

 お二人が采配される時代(とき)を楽しみにしておりました」



一級上の先輩で今年度も最高総が確実と思われていた
昨年の最高総、紫綺さま。


全学院の生徒たちから紫綺さまと慕われる
櫻柳紫綺が私と彩紫に膝を折る。



草薙さんもまた、紫蓮さまと慕われている昨年の最高総秘書。


今年も確実だと言われていた存在。


その二人の登場に、私も彩紫も慌てて立場を忘れて
膝を折り忠誠の証をとる。



「なんだって、 こんなガキが最高総と最高総秘書なんだよ。

 俺はともかくとして最高総は、紫綺で十分だろう。
 
 綾音、貴様の家が学院を運営しているからと言って、
 理事長が身贔屓しているわけではあるまいな」



言いたい放題、言ってくれる草薙さんの暴言の数々も
私は慣れたものでサラリと受け流す。


そんな暴言も不満が出てくることも、
カードを受け取った日から思わなかったわけではない。



だが隣にいる彩紫はそう言う訳にも行かず、
大事にはしたくないと望みながらも事態は大きく動いてしまう。



「草薙議会進行。
 先程の最高総への侮辱の数々改められよ」



彩紫の何時になく鋭い声色が、
一瞬のうちに……周囲を包み込んだ。



「紫蓮っ!!」


紫綺さまの声の後、草薙さんは私を睨み、
机を蹴り飛ばして『palais』を飛び出していく。


「草薙議会進行、謹慎処分」


冷たい彩紫の声が総会室へと響き渡った。



「草薙の処分、承認いたします」


紫綺さまの声の後、下級生たちが順に
「承認いたします」と復唱していく。



こう言った最高総の名誉を著しく傷つけたと秘書が判断した場合、
学院規則に基づいていとも簡単に罰されることになる。



「紫綺さま。

 今年度、紫綺さまの采配のもとで精進させて頂く心積もりでありましたが、
 私が采配する身の上となりました。

 この上は、紫綺さまに恥じぬ采配をする所存です。
 全身全霊を賭して参ります。

 紫綺さま、御指導の方宜しくお願いいたします」



私は何時しか最高総たるもの一言たりとも生徒の前で
声を発してはならぬと言う昔からのしきたりを破って
自らの声で思いを告げていた。




一瞬、彩紫と視線が合う。


下級生たちも……私をじっと見つめる。




「紫最高総、自信をお持ちなさい。
 当初、私にもとに届いた采配を私が貴方へと移したのですから。
 
 私が推薦した采配。
 誰に恥じることもないでしょう。
 
 紫最高総・彩紫最高総秘書。
 貴方がたの真実を突き進みなさい。
 
 ……紫……最初で最後ですよ。
 
 ほら、紫と彩紫が私に忠誠を誓ってどうするのです。
 
 これからは貴方たちの時代なのですから。
 紫蓮のことは安心なさい。
 
 ああは言っていても紫蓮も紫と彩紫のことは高く評価しています。
 
 私たちが礎となり、サポートしてまいります。
 安心して前進なさい」



静かにゆっくりとしたトーンで、
一言一言重みのある言葉を返す紫綺さまに私は無言で頭を下げる。


彩紫もまた頭を下げているようだった。