紫綺さまが入院して以来、
目まぐるしく映りすぎていく日常。

紫綺さま入院の噂が広まった途端に、
マスコミは昂燿の学園都市へと押しかけてくる。


学院の代表である、最高総としてその対応に追われながらも
ビジネスを背負う一人として、慕う紫綺さまの為、
ドナー情報を見つけては、交渉に明け暮れる時間。



紫綺さまの入院から二週間後、
その電話は突然、知らせを告げた。




「紫さま、先ほど臓器移植ネットワークの方からお電話が入りました。
 櫻柳さまの御子息のドナーが見つかりました。

 交通事故で脳死判定が出た、大学生の心臓だそうです。
 双方での手術の準備が始まりました」

「伊舎堂会長、連絡有難うございます。
 紫綺さまの手術宜しくお願いします。

 私も至急、そちらへと向かいます」



電話を切った後、紫音と彩紫の部屋をたずねて現状を報告すると、
綾音に手配して貰ったヘリで昂燿校から大学病院のへリポートへと移動して
手術室前へと向かった。




そのまま手術室の前で、
祈るような時間を何時間も過ごす。



遅れて車を走らせて到着した、彩紫と紫音も合流して三人で
手術が終わるのを待ち続ける。



日付が変わる頃、ようやく手術室が開いて
紫綺さまが姿を見せた。




「お父さん、紫綺さまは?」



慌てて駆け寄る紫音に、伊集院医師は『無事に終わったよ』っと
告げて、そのまま何処かの部屋へと消えていった。




「紫さま、どうぞ最上階へ」



伊舎堂会長に促されるまま、最上階の一室へと迎えられた
私と彩紫と紫音は、そのまま状況を把握する。



モニターに映し出されるのは、手術中の録画データー。
その映像を食い入るように見つめる紫音。





「伊舎堂会長、お世話になりました。
 退院まで、紫綺さまのフォローを宜しくお願いします。

 私の方も明日の親族会議、覚悟を決めて望みますので
 今後ともお力添えを宜しくお願いします」



深々と頭を下げると、彩紫と紫音をその場に残して
一族からの迎えでもある、リムジンに揺られて久しぶりの自宅へと帰宅した。


会議開始の9時までには暫く時間もあるので、
仮眠をしてその時間に望む。



7時半頃、目覚ましの音で起床した私の元には、
彩紫が顔を見せる。