突然の紫の言葉に、戸惑いを隠せず
後ろに控える紫蓮に視線を向ける。


「紫綺……」


小さく私の名を呟いて、紫蓮は先に頭を下げる。


「紫綺さま、紫綺さまにはこれから私が築き上げる
 神前悧羅学院の未来を常に守っていただきたいと願っています。

 その為にも……決意して頂けませんか?」



この場所は……伊舎堂財閥を中心に、
神前悧羅学院生の卒業生たちの活躍の場となっていく。


その場所を私の為に……。



紫……貴方は何時の間に、
そこまで大きくなったのですか?



「紫綺さま」
「紫綺さま」


彩紫、紫音にも同じように私の名を紡ぐ。


「紫綺君」


そして最後には伊集院医師が私の名を呼んだ。



そんな優しさに観念したように
私は頷いた。





そのまま私は昂燿に帰ることなく、
特別棟の一室で、ドナーが見つかるまでの間に成すべき
検査などが始まる。



最新の設備が整った、
希望が溢れる、この場所で。







旅立つためではなく、
大好きなこの場所に再び戻って、
その夢を見続ける為に。