「紫蓮……有難う」


二週間の強制入院から半ば強引に昂燿校へと戻ってきた私は、
パレスの自室に辿りつくと共にベッドに倒れ込んだ。


私の心臓は日に日に弱くなっていく。


覚悟をしていた未来なのに。



私は……何時まで、
この場所に留まりつづけることが出来るのだろう?




大好きな……この場所(せかい)に。





*




「紫綺……紫綺……」




どれくらい眠っていただろうか。




不意に肩に手を当てられて体が揺すられる。
それと同時に聴きなれた紫蓮の声が降り注いだ。



重い瞼をゆっくりと持ち上げる。





そこには……不安げに私を見つめる六つ瞳。



紫、彩紫、紫音の三人。




「おやおや……困った方たちですね」




紫蓮に手を指し伸ばして、
支えて貰いながらベッドの上に体を起こす。




三人の不安げな表情は今も消えることはない。






そんな三人に、ゆっくりと微笑みかけた。




「紫綺さま……答えてください。
 紫音が実家に帰省中、お父様がどなたかと会話されている電話で話を聞いたそうです。

 守秘義務があるとのことで、紫音のお父様も、岸本医師も詳しくは教えて頂けませんでした。

 ですが紫音のお父様は心臓疾患の専門医。
 そして岸本医師は、紫音のお父様の後輩医師であり、当学院の卒業生。

 保健室に校医の常駐するようになったのは、昨年の二学期から。
 校医の役割は、紫綺さまの健康状態を確認すること。

 理事会役員でもある櫻柳氏の依頼で導入されたシステムですね」



真っ直ぐに私を捕えて告げる紫の言葉は、
何故か刀のように研ぎ澄まされながらも、
同時に優しさも併せ持つ。



私は静かに目を伏せる。





「知ってしまったのですね」






小さく吐き出すように呟いた。






「紫綺さま、どうして?」





その先に続く言葉は、
どうして入院をしないのかと言うこと。