「今日の議会は終わります。
 紫音、それでいいかな?」



紫に問われてゆっくりと頷いた。




「さっ、今日会議に参加してくれた
 皆さま、どうぞ前へ」




囲むようにして会議を見守っていた人たちを誘導すると、
生徒総会役員、それぞれの近くへと着席させていく。



そこに運び込まれてくる紅茶に、ケーキ。




ゆっくりとテーブルに並んだ頃を見計らって、
Palaceのエントランスにあるグランドピアノにゆっくりと触れる。




私が紡ぎだすピアノの音色と共にひと時のティータイムを。
それも紫が言い出した革命の一つ。




やがて、それぞれに楽器を持ち寄ったモノが
私の音色にあわせるように、それぞれの楽器を合わせていく。



高揚感がおさまりきらないままに一気に演奏を終えると、
ゆっくりとピアノの隣にたって一礼した。




ただ一つ……気がかりなことは、
この場所に紫綺さまと紫蓮さまの姿が見えない。



そんなPalaceの景色を一番楽しみにしていた方のはずなのに。

そんな心の中に湧き上がった不安を抱きながら、
私は翌日、コンクールの為に学院を離れた。



山奥の学院から、実家より寄越された車に乗って
都心へと向かっていく。




コンクール当日。
課題曲はラヴェル 協奏曲 ト長調。

そして自由曲は、自身が作曲した三人の絆の調べ。
『虹の架け橋』



私よりも少し遅れて、学院から下山してきた
紫と彩紫に見守られながら、会場で今持てる全ての力で
演奏に向き合う。




ラヴェル 協奏曲 ト長調。


第一楽章は、ユーモラスなサウンドでもあり、
少しジャズにも通ずるような世界が広がる。


第二楽章は、叙情的であり懐古的な世界。
木管から受け継ぐピアノのトリルは儚げに……。


第三楽章。
管弦楽の魔術師らしいラヴェルの華麗な世界。







課題曲と自由曲をオーケストラとの共演で乗り切った後は、
観客からの拍手と共にゆっくりと舞台を降りた。