紫綺っ!!
なんだってお前は自分が一番後回しなんだよ。



お前が望むなら……オレは、
この心臓をやることすら迷いはない。



医務室から連れ帰った部屋。




紫綺は、すぐにベッドに横になって
眠りの世界へと誘われていく。




一日、一日。



その時間が過ぎていくたびに、
確実に命を縮めていく紫綺。






オレは……お前に生きていて欲しい。





ベッドで眠る紫綺の寝息を聞いて安堵する毎日。

ふいに紫綺の声が途絶えると不安になって、
傍に確認に出向く日々。



あの日、紫綺と出逢ってから……オレの時間は、
紫綺を中心に回り始めた。





紫綺が眠るベッドサイド。





綺麗にまとめられたHBW制度の企画資料に
ゆっくりと目を通す。





HBW制度。




イギリスの学校に通う知人からの電話で、
紫綺は久しぶりに笑顔を見せた。



今、紫たちの力になろうとしていることは、
神前悧羅の未来を担うことでもあり、
紫綺の夢であることは承知している。






それでも……素直に背中を押せないのは、
お前の心臓のことがあるから。





*



入院しろよ。




*







そんな一言すらも言い出せなくて、
オレは今日も暗闇の中、祈り続ける。







伝えられない想いを心に秘めて。




眠り続けていた紫綺の瞳がゆっくりと開く。
寝乱れた黒髪が艶々しい。