真っ暗な闇がゆっくりと降りてくる。


……やめて……。



このままでは私が壊れてしまう。



誰か……この暗闇から私を連れ出して。





*




ゆっくりと何かを掴むように伸ばした掌。


その手から伝わるぬくもりが私を現実へと覚醒させていく。






……此処は……。





医務室?


確か……授業を受けていて……。


私が目を覚ましたとき、真っ白い天井が視界に移る。


寝かされていたベッドから体を起こして、
ベッドサイドのカーテンを開けると、
ゆっくりと立ち上がる。




「櫻柳KING、お目覚めですか?」



目の前には、校医の岸本医師が
眼鏡の淵に手を添えながら近づいてくる。



「……岸本医師」


「気分はいかがですか?
 授業中に倒れてしまったみたいですね。
 
 草薙議会進行が血相変えて、
 貴方を抱えて飛び込んで来ましたよ」



岸本医師はそう言いながら私をデスク前の椅子に
誘導して座らせると、聴診器で診察していく。



「紫蓮は?」

「草薙議会進行は授業です。
 今は6時間目」

「6時間目……私はどれほど眠っていたのですか?」




記憶を辿ろうとしても、
うまく繋がらない曖昧なものを手繰り寄せる様に
言葉を続ける。




「櫻柳KINGが眠られていたのは三時間です。
 校医として、これ以上貴方に無理はさせられません。
 貴方の心臓は……」



そう告げる岸本医師の声は声は残酷な現実を突き付けていく。



「KING、何を焦っているのです。

 最近、この学院の風が少しずつ新しくなっていくのを
 僕も感じています。

 僕自身もここの卒業生です」


「えぇ……今、この学院は紫を中心に
 生まれ変わろうとしています」



そう……。



それは私が成しえなかった大きな壁で私が求め続けた夢。
だからこそ……私は紫に私のような思いをさせたくないのです。