「有難う存じます。
 お言葉に甘えて宜しいですか?」

「えぇ。

 紫、私の研究が貴方のお役に立つのでしたら
 喜んで提供させて頂きますよ」



神前に残すべき伝統。

神前に不必要なもの。


入り乱れたそれらを一つ一つ話し合いの中から、
革命の対象とするか否かを決めていく。





「今の神前の上下関係についてはどう思うだろうか?」



今の神前の上下関係。




それは……社会を学ぶ意味合いも多くするために、
作られたらしいが……今の状況で良いとは思わない。



今の現状は上級生は殿様。
下級生は家来。



「神前の上下関係は私は残しておいてもいいと思う。
 上下関係のなかで学ぶものもあるだろう。

 私の場合も、理不尽な上級生の要求を受け入れ実行することで
 忍耐強さは学習することが出来たような気がするよ」



確かに紫音の言うとおりだな。



上級生の中には、下級生に無理難題をふきかけ、
下級生を小間使いのように使うものもいる。



それらの言うことに堪え、
それを受け止めて実行することは社会に出たときに
役に立つかも知れない。



「だが形を変えることは出来るだろう」


草薙さんが会話の中に参戦する。


「形を変える?」

「あぁ」




そう言うと、草薙さんは紫綺さまの方を
軽く見てアイコンタクト。




「これは昨年、私が理事長先生がたにお話しようと
 思っていたことなのですが、上級生が下級生の師となることは、
 私は神前の誇りとして残すべきと考えています。
 
 ですが、上級生・下級生共に50%50%であることが
 絶対条件だと思うのです」




上級生・下級生共に体等で居ることが出来れば
確かに問題はないのだが……。




「私は神前にもイギリスの学校に伝わる制度の導入を提案します。

 イギリスでは、ハウスと呼ばれる寮に上級生・下級生が共にすみ、
 キャプテンの元に共同生活が行われているとききます。

 そして、デューティーと呼ばれる存在が、
 雑用や下級生指導を当番制で行っているのだと知人から聞きました。


 それを神前の制度として神前らしさを加えて根付かせたいと思うのです。


 ハウス・ブレイン・ワーク制度。
 HBW制度。

 上級生による、下級生指導で社会に必要な「絆・忍耐力」を
 養うと共に知力の発展を担えればと思うのです。

 下級生は上級生の身の回りの手伝いをする。

 手伝いをすることによって社会の一員になるための
 勉強以外の大切なことを学習する。

 上級生もまた将来、社会に出た時に必要な指導力の育成を
 担っていくことが出来ればどうでしょうか?」