俺は紫の怒りがおさまるまで一言一句、
聞き逃すことがないように気を配りながら
アイツの思いを受け止め続ける。


だが思わず噴出してしまった。
 

精一杯、噴出さぬように気をつけて居たのだが
やはり……紫が感情を剥き出しにしてくれたことが
俺にはとても嬉しくて。


「何だ?
 彩紫、何がおかしい?」


不機嫌そうな紫のトーンが聞こえ、
紫が俺を睨みつける。


「……悪い悪い……。

 だから紫、そんなに怖い顔して睨むなって。
 久々に素顔の紫を見た気がする」



……そう……


幼等部の頃のように……泣きたい時に泣いて、
怒りたいときに怒って、笑いたいときに笑って……。

何もかもが自然体で……
作り物でなく行われていた
……無理のない時間のように……。


その言葉の後……紫は、
その視線を窓から見える
暗闇の景色へと向ける……。


「……紫……」

「……彩紫……。
 私も忘れかけていたよ……。

 本当の自分を……」


呟くようにポツリと零した紫が、
ゆっくりと俺に向かって振り向く。


「彩紫……、私は諦めないよ。

 あの石頭と何度ぶつかってでも、
 私は学院を生まれ変わらせる。
 
 この学院が私と彩紫を出会わせてくれた
 場所だからね。
 
 ……彩紫……、
 共に歩いてくれるかい?」

「あぁ」


答えは決まっている。


「有難う、彩紫。
 
 なら……そろそろ迎えに行こうか。
 私たちのもう一人の大切な仲間を……」



……そう……答えは決まっている。



初めて出会ったその瞬間から、
俺の運命は……紫……おまえと共に……。


そしてもう一人の……親友……伊集院紫音
アイツとも共に。