「今此処で議論をする議題ではないと私は思いますが、
 このような議題に何故、皆様は無駄な時間を割かれるのでしょうか」


紫音の通常より低く乾いた抑揚のない声。


「紫音、何故そのような物言いが出来るっ!!」



途端に彩紫が感情的になって立ち上がり、
紫音を掴みにかかる。


「彩紫、止めるんだっ!!」


私も慌てて紫音と彩紫を止めに入るが、
私の声は彼らには届かない。



すると紫綺さまが取っ組み合いをする二人の中に、
その身を投じる。


二人が互いだと思い手を上げた相手は紫綺さま。



二人の拳を受けても尚、紫綺さまは倒れることなく、
慌てるでもなくただ冷静に二人を視線で威圧して制する。



「紫綺っ!!」


慌てて草薙さんが紫綺さまに近寄る。


「最高総、このくだらない喧嘩の発端は貴方にある。

 何故、今日のこの場でこのような議題を持ち込んだ。
 改革するしないが問題ではない。

 今、その話はこの場でするものではない。

 それは私も伊集院議会書記と同意見だ。
 まずこの場にその議題を持ち込む前に君の一族を説得することだ。
 
 私たちが此処でどんなに議論しても上が承認しなければ何も変わらない。
 
 それは君が一番良く知っていることだと思っていたが……ね。
 綾音紫最高総」



草薙さんの容赦なく切り裂くような声が
私の心に次々と突き刺さっていく。


言われる言葉に何一つ反論はない。



……もっともかっ……。




「申し訳ありませんでした。

 今、この場で議論するにはまだ時が早かったようです。
 
 先に私が最高総として学院の代表として
 理事長と話し合って参ります。
 
 見事、承認が得られればその時は再び同じ質問をさせて頂きます。
 ありのままの皆様の声をお聞かせ願いたいと思います」



その後も定例会は続けられていく。
だけど私はその場に居るだけで、会議に参加するには心が伴わない。



「これを持ちまして
 第三回定例会は閉会致します」



私の言葉の後、草薙議会進行の声が室内に広がる。


その言葉に続いて私たち役員全てが一礼をし続いて私以外のモノは
全員忠誠の証をとる。


膝を折り頭を下げて。
私はその間を一人、先に通り過ぎて部屋を後にする。


その後方には彩紫が続いていた。


エレベーターの扉が開き、私たちは二人は最上階へと向かう。


願掛けをした髪に触れる。