オレの隣で紫綺は静かに眠っている。


数時間前、発作を起こして倒れた紫綺。


アイツが発作を起こすたびに、
オレは自分自身の心臓が止まりそうになる。



オレと紫綺は物心ついたときから一緒にいた。



学院に入学する前から常に一緒に居た。


だからと言って、腹違いの兄弟などではない。



紫綺はオレにとっては仕えるべき存在。



オレの一族の歴史は古い。


だがそれと同じように紫綺の家の歴史も古かった。


時の頃は江戸時代まで遡る。
オレの家系である草薙家は江戸時代、紫綺の櫻柳家に仕えている身分だった。


その柵が時代を超えた今も至極当然のように根付いている。
それが根本にあるオレと紫綺の関係。



紫綺が生まれたとき、紫綺の父親である
櫻柳の御当主はオレの父に告げた。



『紫蓮の全ては私の息子に捧げよ』



即ち、その瞬間にオレはこの先の一生涯の人生を
紫綺の従として生きることを決め付けられた。


だからと言ってオレは不満があるわけではない。




紫綺はオレにとって、物心がついた頃から
この手で守り抜きたい存在だった。


守ってやりたい存在だった。





神前悧羅学院の入試の時には様々な難問もあった。



まず第一にオレにはこの学院に相応しい身分を
持ち合わせていなかった。


そして……櫻柳の御当主もそこまでのことをオレに望んでは居なかった。
その事実を父から聞かされた瞬間からオレの計画は始まった。


御当主の命令だから紫綺と共にいるのではない。



オレ自身が、紫綺に仕える未来を選んだのだと
その事実を御当主に知ってもらう必要があった。


だからオレは神前悧羅学院に紫綺と共に入学したいのだと。
このオレの全てをかけて紫綺の従となり仕えていたいのだと。