「私の中で願掛けをしました。
       
 紫綺さま、私は今この学院のシステムを根本的に見直し
 改革したいと考えています。

 私は確かに先代理事長の息子で現理事長は私の従兄弟。
 この学院を経営する綾音の名に連なるものです。

 ですが…… 一族の成すことは正しいとは思えない。
 神前は良い学院です。
 
 だけど……それと同時に最低の学院でもあるのです。
 伝統を重んじることに意は唱えません。

 それでも時代と共にその姿を変え、良き伝統を重んじつつも
 新しい風を吹き入れる必要があると考えています。

 その革命の風を起こすため……私は一人で願掛け致しました」




そう今のままではこの学院たちは廃れてしまう。




閉鎖された空間。
限りある人数。


生徒を意思のない機械人形に育て上げたところで、
何一つ、世の中に貢献することは出来ない。


神前が……生徒の為と生徒総会のシステム事態を
謳うと言うならば、生徒総会こそが人形であってはならない。



そう感じ続ける今の学院システム。



今まで内に秘め続けていた思いを……勢いとは言え、
紫綺さまに伝えてしまっていた。





その直後、予鈴である筝曲の音色がスピーカーから流れる。



「……紫……貴方の信じる道を突き進みなさい。
 迷うことなく真っ直ぐに。
 
 貴方は必ず、神前に新しい風を吹き入れるでしょう。
 私は何時も応援していますよ。

 私に出来ることがあれば何時でもいらっしゃい。
 もうすぐ五時間目が始まりますね。

 ……紫……、貴方も教室にお戻りなさい」





二人だけの時間。


私のことを昔と変わらず、
『紫』と名前で呼び続けてくれる紫綺さま。


その紫綺さまの心遣いが今はとても暖かく、
庭園を静かに後にする紫綺さまに向かって、
私は暫く……最敬礼を行っていた。






私は私の信じる道を歩み続ける。


それがどんなに険しく困難な道程と知っても、
私の背中を静かに後押ししてくださった紫綺最高総の思いに
答えるために……。


私の中の最高総は、あの方をおいて存在しない。


紫綺さまが力を下さる限り、
私は真っ直ぐに歩き続けよう。


信じるままに。


私の中で……静かに……確実に革命の鐘が響き渡る。




私は負けはしない、決して誰にも。





そして自分自身にも……。