だが今年は違う。


今年の紫は最高総だ。



今まで紫と親しくしていたモノも紫を神のようにあがめる。
俺や紫が傍を通るだけで周囲のモノたちは膝を折り忠誠の形をとる。


最高総とは……崇拝の対象であり、
生徒たちの神様。



神前悧羅学院の長い歴史のなかで、
何時しか……そのように解釈された最高総と言う地位。



籠の鳥。




操り人形と言う名の学院の神様。



「さて……休もうかな」



心配をかけさせまいと、笑顔を見せながら
俺の方に視線を向ける紫。


就任してまだそんなに時間が経っていないのに、
アイツは少し痩せたようなそんな気がした。



「そっか、なら俺も部屋に戻るかな。
 ……紫……、無理すんなよ」


一言、声を残して俺は紫の部屋を後にする。



自室に戻ってキングサイズのベッドに一人転がる。
俺たちはこの一年、この檻のなかで生活をし続ける。


広い部屋。




豪華な家具。
何不自由ない生活。


だけど……その生活と引き換えに失ったものもある。
その大切な宝物を失いながら俺たちは今を生きつづける。



この一年……重圧に押し潰されることのないように、
精一杯突っ走りながら。




広すぎるベッドに横になりながら、
俺は静かに落ちてくる闇を感じていた。