――夏はまだ始まったばかりなのに、蝉はうるさいくらい鳴いていた。



始まったばかりなのに、凄く暑かった。



「……何で分かんねぇんだよ、小梅子!!」



轟君の声が耳に突き刺さる用だ。



蝉の声よりうるさい。



「そんなの分かってる!!」



「だったら、何で。」



轟君は今にも泣き出しそうだ。



「轟君!!」



「いままでありがと、さよなら。」



「小梅子!!」



轟裕太と未稀小梅子は、十年後また出会い、また繰り返していく。



――1990年8月7日




「あっちぃねぇ、小梅子ぉ。」


「そうだね、沙都子さん。」



「本当に悪いねぇ、付き合わせて。」



「そんなことないですよ、学校見学させて貰えるだけで嬉しいですから。」



「そうかいそうかい、あっそうだ。今日から新任が来るんだよぅ。」



「そうなんですか。」