高校生活最後の秋。
それは突然にやってきた。


いつものように、楓部屋には桜湖、羅那、梨李芽、樹悸、桃愛、詩菴、あやめ、涼、カミーが集まっていた。


いつものようにバカいって笑っていた。

ふとあやめが呟く。


「楽しかったなー」


そんな言葉を聞き逃すことなく、桜湖が言う。


「なにその終わりみたいなの笑 これからも楽しいでしょ~♪」


だが、あやめはうんとは言わなかった。


「突然だけど...うち、転校する。あした」


突然の衝撃的な発言に、そこにいた全員が静まり返った。


「あの...涼..ぅち..」

あやめが小さな声で話しかけた。次の言葉が出なかったのは、見つめた涼の瞳から今にも涙がこぼれ落ちそうだったからだ。


「勝手にしろよッ」

「涼!」

詩菴が止めたが、それも聞かず、涼は出て行ってしまった。



(何がどうなってんだ。あやめが...転校?なんで言ってくれないんだよ...。)

女子寮を飛び出し、無我夢中で走った涼の息は切れ切れだった。

涼の頬をとめどなく涙がつたう。


「ぅあ━━━...ッ」

涼の心は声にならない叫びとともに引き裂かれていく。




それは、美しくも残酷な日の出来事だった。