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「おにぃさまぁ~。おねぇさまぁ~。...ねぇだれもいないの?
 わたしひとりぼっち?」

黒髪に青く透き通った目。唇は小さくて可愛いピンク色。名前はキャメロン・アン・モーガン。当時6歳。

私は走った。長い長い廊下を。

『キャメロン』自分を呼ぶ声を聞き、私は走るのをやめた。
口元がにっこり笑う。

「おにぃさま!どこ~ッ?ねぇ~~!」

大きな目をキョロキョロさせて“おにぃさま”を必死に探す。

「あっ!みっけ!」

たたたっっと部屋から出てきた青年に私は抱きついた。
“おにぃさま”と呼ばれたのは“ハリー”
私の8つ上の兄だ。

「キャメロン」

今度は少し大人びた声が聞こえてくる。

「あ、おねぇさま!」

隣の部屋から出てきた彼女に私は抱きつく。

「まぁまぁ、落ち着きなさい。」

そう言ってにっこり微笑んだ“おねぇさま”は“ローズ”
私の7つ上。

私たち3人は貴族のきょうだい。
家はお屋敷。父母は《ロイヤル・カンパニー》というお菓子会社の社長だ。

お父様はほとんど会ったことがない。いつも働いているから。

お母様は...

キャメロン、私はお母様に甘えたらだめ。だってお母様はいつもハリーのことばっかり。
私はどうでもいい存在。
どうなってもいい...いてもいなくてもいい存在。

お兄様やお姉様はそんなお母様を見ていつも注意してくれる。

でも...1年前の4月24日、その日に私はお母様にこう言われた

“邪魔”

って。あのときの場面は今でも鮮明に思い出せる。怖かったから...かな。
私はお母様のこと“チーカ”って呼ばない。
ましてや本名の“エバ”なんて。

でもそんな“普通の日々”は奪われてしまった。

そう、お母様に“邪魔”と言われてちょうど1年がたった日、すべてが変わってしまった。



お父様は殺された。ナイフで左胸を刺されて...


お母様は殺された。小刀でずたずたにされて...

愛犬“リー”は殺された。玄翁で何度も頭を殴られて...

お兄様とお姉様は必死で私を守ってくれた。

お姉様はお父様を刺したナイフで頬を切られた。