冬の寒さもおさまり、桜の木が蕾をつけ始めた頃、春の色とは対照的なダークブルーの色は椿高等学校に通うもの、ほぼ全員の悩みとなっていた。(一部分の気違いを除く。)


「成績発表会、開会~~♪」

窓の外の華やかな色とはうらはらに『楓部屋』の室内ではただ1人(一部分の気違い)を除き、全員がどんよりオーラを思う存分に醸し出していた。

ベッドの上で力尽きたように寝転んでいる梨李芽。
その横で、ぐったりとして梨李芽と自分の“ほっぺた”をくっつけている樹悸。

座布団に座り脱力している桃愛。
元から少しくしゃっとした髪をもっとぐしゃぐしゃにしている詩菴。

すでに開き直り、機械的に昼食を作っている桜湖。


そんな中でとびっきりのスマイルを見せるカミー。

カミーはダークブルーの通知表を全員分しっかりと抱えまだニヤニヤしている。

「ところで!あやめは?そんな顔せず、みんなで祝おーよ!せっかく高校生活1年目が終了し たんだよ?!!
 I look not happy. Why??」

そう。この日は修了式があった。
つまり通知表が配られたひなのだ。
自分の成績を見てこのどんよりオーラが生まれた。

「あ~、あやめは午後から出かけるってルンルンして出かけてったよ。誰といくとか教えてくれないし。なんでだろ?」

カミーは目をパチクリさせていた。そして口を開く。

「ほうほう...じゃあ告ったのかな?ほら、あの佐藤涼に。」

今度は梨李芽と桃愛が目をパチクリさせた。

「なんでカミーちゃんが知ってるの?」「もしや...エスパー?」

桜湖はもうじゅうぶんカミーの恐ろしさについて知っていたから何も言わない。

「そのことなら...」と今度は梨李芽をぎゅーっと抱き寄せて、梨李芽の頭を撫でながら樹悸が言った。

「もうカップル成立してるよ。涼、今日デートするって言ってたし。」

カミーは顔をしかめ、「そうか...もう告ったか...」とつぶやいたと思うと今度は

「で」

と言って、樹悸と梨李芽に目線を向ける。そして一言言い放った。

「じゅきりん!数学が“1”だったからと言ってプレイボーイにならない!!」

『え?』

この世に1をとるやつなんているのか?というカミーの呆れ顔に詩菴と桃愛そして桜湖の心の内はただ1つ

『(自分よりアホがここにいた。)』

全くむなしいやつらだ。

その時こんこんッと楓の木でできた戸がかろやかな音でノックされた。


『風切でぇす』

その声にカミーは舌打ちをする。

「てめーか。入れ。」