穂乃花は昔から歌を歌うことが好きだった。コンクールにも出場し、いい成績を残していた。


だが中学二年生の時に父が病気で倒れてからは歌を歌う時間などなくなった。

働き始めた母に変わり、家のことをするようになった穂乃花は、いつしか歌をくちずさむことさえやめてしまったのだ。

今では父も回復し、前ほど困難な生活をおくることもなくなったが、歌を歌う気にはなれなかった。


それなのに───

どうしてなのだろう。最近は昔のように歌を歌いたくてうずうずしている。