彼がボールを蹴っている後ろ姿をいつも窓越しに眺めている穂乃花。


別に彼が好きなわけではない。

ただ気になるのだ。


周りから『天才』と呼ばれ、憧れられ、またうらやまれる彼が、
人知れず地道に練習を重ねているという姿から目が離せない。

そしてふとした瞬間に彼の姿が目に浮かぶ。


(ただびっくりしているだけよ。彼が練習してることを知って)


穂乃花は自分の思いから目をそむけるようにして、考えを振り払った。


「なんでもないよ、南」

「そう?ならいいけど…。」


穂乃花はお弁当をかきこんだ。