黄昏に香る音色

恵子の目が…なつかしそうに、ステージを見つめた。

「あたしに…才能があると、いつも言ってた。あたしも…調子に乗って、歌手になったわ。いろんなところで歌い…少し有名になって…CDも出せた。もっと…歌を聴いて貰いたかったから…自分の店も…場末だけど、もてたわ」

明日香は、何も言わず、ただじっと…恵子を、見つめていた。

恵子の目の色が、とても淡くなる。

「彼なしには、あたしの歌は、生まれない。結婚しょうと言われた時は、本当…嬉しかったわ。一生…彼だけじゃなく、彼の音も、手に入れたんだから…」

3人の演奏が終わり、

お客の1人が、ステージに上がった。1曲歌うみたいだ。

演歌だ。

彼らは、カラオケの代わりもする。

音痴はいない。

と阿部が言っていた。

カラオケとは違い、バックが歌う人に合わせて、演奏したらね…。

ただし、音程や歌い方が安定していないと、大変らしい。

確かに、大変そうだ。

歌ってる人は、気持ちいいだろうけど…。

ステージで、生で合わせてくれることは、KKのウリの1つとなっていた。



「彼は…音楽に対して、妥協しない人だった。だから、あんな音を、出せたの。だから………そして、出会ったの…彼女と。あたしよりも、才能のある歌手にね」

恵子は、後ろの棚から、

1枚のCDをだした。

安藤理恵。