黄昏に香る音色

啓介が、恵子に電話してから、

しばらくたった。

スケジュールが、詰まっており、クタクタになるまで演奏していた。

嫌な予感を忘れる為に。

LIVEが終わり、

スタジオに戻って、休んでいたLikeLoveYouに、日本から電話が入った。

サミーから…電話をかわったた啓介は、落ち着いた口調で受け答えしている。

「すいません…おばさん…」

電話の相手は、亜希子だった。

「すぐに日本に戻ります」

啓介の口調が変わる。

「え?もう通夜も葬式も、すませたんですか!?」


亜希子は説明する。

恵子から、亜希子はきつく言われていた。

もし、あの子達が向こうに行ってる時に、何かあっても、

決して、すぐに言わないように。

あの子達のやらなければならないことが、終わるまでは、

絶対、日本に帰らせては、だめだと。


啓介は、静かに受話器を置いた。

「啓介…」

明日香が、そばに寄る。

「母さんが亡くなったよ。7日も前らしい…」

倒れそうになる啓介を、明日香が支えた。

明日香もまた倒れそうだったが、啓介を支えた。

「間に合わなかった…」

明日香の胸にしがみつき、啓介は泣き崩れた。


原田と武田も、声を殺して…泣いていた。


「畜生!最初から、わかっていたんだ!間に合わないことは」

阿部は叫んだ。

啓介と阿部は、知っていた。

恵子が、

末期癌であったことを…。

発見したときには、

すでに、

手遅れだったことを。