「大体!里美の活動場所は、ここじゃなくて、大学の…」

「シャラップ!」

里美は、明日香の言葉を遮ったが、

遮り方が、イマイチどころではない。

「あたしの活動範囲は、無限よ」

(あたしの…?)

明日香は、眉をひそめた。

1人称がおかしい。

「つまり、バンドのメンバーがやめたと」

明日香の言葉に、

里美は、明日香に抱きついた。

「おお友よ。それ以上は、いうべきではない。例え…真実であったとしても」

(何の小芝居よ)

明日香は、里美を突き放した。

「何よ!その反応!ひどいじゃない。傷心のあたしを」

「うざい」

明日香は、里美にはきつかった。

「ママあ」

泣きつく対象を、恵子に変えた。

恵子は、肩をすくめた。

「仕方ないがないわね」

里美は、恵子にすり寄る。

「メンバーとケンカしちゃって…行くとこがないんです。しばらく、ここに置いてください」

明日香は、里美を恵子から引き離す。

「ママ。役立たずは置いたら、だめです」

「役立たずとは、失礼な!親友に向かって!」

「ドラマーだけいて、どうするのよ!」

「あっ!バンドをやってる人の中で、どれだけドラマーが、貴重なのか知ってるの!」

本当に仕方なく、

里美は、ダブルケイでアルバイトすることになった。

明日香は呆れながらも、

里美が入ったことで、店が明るくなったことは喜んでいた。



LikeLoveYou。

慣れない場所ながらも、

さすが、啓介が組んだメンバーだ。

そつなく演奏をこなしていた。

明日香は、お客さんのリクエストで、ステージに上がることはあったが、

大体は注文をとったり、ホールの仕事に追われていた。

恵子がドリンクとカウンターを、亜希子が厨房を、

里美は、洗い物をしていた。


あっという間に、営業が終わる。

電車の時間がある為、

亜希子と里美は、早めに店を出た。

明日香は、電車で帰ったり、阿部に車で、送ってもらったりしていた。