話題は走る。

すぐに情報は、

リアルタイムで、人々に送られる。

ネットの普及は、

人々を豊かにした。

溢れる情報は…

知りたいことを、キーボードや、マウスをクイックするだけで、

すぐに得ることができる。


しかし、

これだけ、溢れる情報の中で

同じものが流行り、

消費されるのはなぜ。

それが、

大衆意識というものなのか…。

人々は、

本当に豊かになったのか。

溢れる情報に踊らされ、

逆に

狭くは、なってはいないのか。

判断力は、下がっていないか。

人は、人と触れ合って、

初めて、実感できる生き物なのに…。


ニューヨークタイムスに…

今、話題の歌手

と紹介された記事を、見たとき、和美は覚悟した。

次の消費は、自分だと。

消費され、なくなる前に、

あたしのやるべきことは…

歌手として、

日本語しか歌わない歌手には、ならない

と誓った時から。


安藤理恵がどうして

自殺したのか…。

今の和美には、わかっていた。

ほとんどのミュージシャンは、

理恵のすばらしさを理解した。

しかし、

ある程度、突き抜けたアーティストしか、

理恵を認めなかった。

理恵を、突然変異とでも思ったのだろう。

だからこそ、

普通のミュージシャンは…。



理解しても、認めるとは限らない。

和美はやるべきこと。

グラミーのジャズボーカルにノミネートされたと、連絡があった。

喜ぶスタッフの中、

和美はため息をついた。

赤で、決めた自分の姿を眺めた。

もう予感がしてた。

(いいわ、別に…。あたしは、どこにいても、どこで歌っても…あたしだから…)