黄昏に香る音色

すべてを、全身全霊で受け止め、

歌として、しぼりだす。

母性というものの凄さを、啓介は、恵子から感じていた。

本当の息子でない…俺の為に、すべてを捧げている恵子。

それを返すことなんて、

啓介にはできない。


だから…せめて、

恵子が好きな音楽で、

誰よりも、凄い音を奏でたい。

恵子の愛情から、生まれた音で。




「啓介…」

和美は、グラスをカウンターに置いた。

俯きながら、

和美は、呟くように言った。

「明日香ちゃんだっけ…あの子…」


「明日香ちゃん…?あの子が、どうかしたの?」

思いもよらなかった明日香の名前が出て、啓介は驚いた。

「あんた…」

和美は、言葉を続けようとしたが、

フッと笑うと、言葉を止め、

話題を変えた。

「マザコンだから…さっさと彼女つくりなさいよ。年上で、しっかりした彼女を」

そう。

あたしみたいな。


「よ、余計なお世話だ!それに、誰がマザコンだよ」

顔を真っ赤した啓介に、

和美は微笑むと、

グラスの中身を、飲み干した。

「ご馳走様」