校舎内を走りぬけ、

激しい鼓動を抑えながら、渡り廊下に着いた。

校舎から飛び出すと、

夕焼けに染まった体育館と、目の前に広がるグランド。

その少し向こうに広がる山々さえ、赤い。

美術の授業の時、明日香はこの景色を描こうとしたけど…描けなかった。

いつも見ている癖に、毎日照らされてる癖に、

単なる赤や、オレンジとは違う光の色…。

いや、光が大気に反射して、色を出しているなら…

空気というキャンパスに、太陽が塗った色という光。

夕陽に照らされてる自分も、キャンパスなんだ。

明日香は、大きく息を吸い込んだ。

目をつぶると、聞こえてくる…

グランドに響くバットの快音に、駆け抜ける足音。

すべてが想像できる…

いつもと、変わらない風景のはずだったのに。

目を開いた明日香の、動きが止まってしまう。


いつも一人のはずのその場所に、誰かがいた。

男の子。

吹き抜ける風と、照らす夕日が、男の子を…淡く浮かび上がらせていた。

それは……

明日香にとって、幻想的で、近寄り難く感じさせた。