黄昏に香る音色

音楽室につくと、

一心不乱にドラムを叩く

里美がいた。

音が激しい。

滝川が、明日香に気づき、後ろに手招きする。

音楽祭にでるメンバーが、揃っていた。

「話が進んでなかったので…まずは、やる曲を決めなければならない。1組、2曲しかできないけど」

しばらくの沈黙の後、

次々に曲名が上がる。

最近のヒット曲や、有名曲たち。

だけど、これという曲がない。

また黙り込むみんな。

「今回は、香月さんがメインなんだから…まず、香月さんが、やりたい曲はないの?」

唐突な浅倉の言葉に、まったく口を開いていなかった…明日香に、全員の目が向く。

明日香はただ、里美の叩くリズムに、身を任せていただけだったから、

いきなりのフリに驚く。

やりたい曲…。

明日香は思わず、

「マーヴィンゲイのWhat's Going On…」

その曲は、いずれ…遠い未来に明日香がライブをするとき、

1曲目は、トランペットで、これをやりたかった。

スムーズジャズというアメリカで流行っているジャンルがあって…たまたま聴いた、ソウルカバー集に入っていた。

気に入り、原曲を阿部から借りて、

さらに気に入った。

「ホワッツゴーイングオンか…確かボールウェラーも、カーバーしていたな。ロックアレンジで」