黄昏に香る音色

麻里亜は、深々と頭を下げた。

「あたしも…あなた達に対して、謝ります。今まで、ごめんなさい」

顔を上げた麻里亜は、優しく微笑み

「もう部活に行かなくちゃ…突然呼び出して、悪かったわね。ごめんなさい」

麻里亜はまた、頭を下げると、

一目散に走り去った。

高橋のいるところまで。

明日香はベンチに、倒れるように座った。


傷ついて、傷つけられたと思っていた…

明日香と里美。

傷つけた相手も傷つき、

そのそばにいる人も、傷ついていた。


高橋のことは許せない。

でも…もし……

(あたしが、高橋の気持ちを受け入れていたら…)

よかったのか。

それは、またちがう形で結局…

傷つけ合う。

何よりも、

里美をさらに、傷つけることになる。

それは、絶対にいやだった。


(人を愛することって、こんなに難しいの)


明日香は、沈みかける夕陽に問いかける。

しばらく夕陽を、見つめ続けた。


例え…

こたえてくれなくても…。