「ったく、むかつく!」

kkに着き、

カウンターに座った明日香は、音楽祭のビラを見ながら、愚痴る。

「あれ?里美ちゃんは?」

後ろから、カウンターに近づいてきた阿部が、明日香にきいた。

明日香は振り返り、膨れ顔を見せる。

恵子は、肩をすくめると、

「ケンカしたらしいわよ」

「だって、ひどいんですよ。無理やり…」

明日香の説明を、ききながら、

恵子は、タバコに火をつけた。

阿部は笑う。

「いいんじゃない」

恵子は、タバコをふかす。

阿部も頷き、

「いいことだよ。歳の近い子とやることは…ここは、年寄りばかりだからね」

「悪かったわね」

恵子の言葉に、阿部が狼狽える。

「ね、姉さん!そういう意味じゃなくて…」

何とか言い訳をしようと、必死な阿部の姿に耐えられず、

恵子は、笑ってしまう。

「わかってるわよ。同い年の子と音楽をやり、学び、成長することは…今しか、できないことだから」

阿部は、胸を撫で下ろし、

「俺らなんて…もう成長しょうがない。新しい曲も、そつなくこなすけど…こなしてるだけ。新しいことはできない」

「そうですか?」

明日香は、首を捻る。

「明日香ちゃんは、若いからね。自分の限界なんて、わからないだろ」