黄昏に香る音色

ジャケットを眺めていると、コーヒーを運んできたおばあさんは、恵子の足元にある紙袋から、覗いた大量のCDに、気付いて…

このCDは、何かときいてきた。

恵子が説明すると、

おばあさんは、コーヒーをテーブルに置いた後、じっと恵子の顔を見つめた。

程なくして、

おばあさんは、笑顔になると、

一枚買うと言いだした。

恵子は驚いた。

嬉しい言葉であるけど、

自分の分身であるCDを、同情で買ってほしくなかった。

断る恵子に、おばあさんはこう言った。

「出会いは、一期一会だよ。それに…いい歌手は、顔を見ればわかる」

おばあさんの顔はさらに、優しくなり、疲れた恵子を包む。

「あんたは、いい歌手だよ。間違いない」

その後、おばあさんは、恵子の手を握ると、

ぜひ買いたいと、力強く言い、満面の笑みを見せた。