黄昏に香る音色

「すごいとこね」

明日香を、何とか探し出した有沢里美が、

隣に来て、壁にもたれ掛かった。

本当は、明日香といっしょに来るはずだったが、遅れてきたのだ。

チケットに、住所が載っているから、迷うことはなかったようだ。

里美が右手に、もっているドリンクは…。

明日香の視線に気づき、

里美は、照れ笑いをする。

「あっ!これ…芋焼酎の水割り」

高校生が…ライブハウスで焼酎って。

里美は一口飲むと

「おいしい」

満足げに呟く。

(おっさんか!)

「たまに、部の打ち上げで飲まされるんだ」

(部って、あんた園芸部でしょ!)

って、ツッコミたい明日香の視線を感じて、

里美は、頭をかいた。

「たまに、うちのおやじがすすめるのよ。たまにね」

言い直す里美の言葉に、明日香は呆れた。