黄昏に香る音色

恵子は語り出した。


やっと出せたCDは、まったく売れなかった。

自主制作に近い為、アルバムは、自分で売らなくてはならなかった。

商店街で、ダンボールのステージの上で、歌ったけども…。

忙しい主婦たちは、見向きもしてくれない。

疲れ果て、いっしょに付いてきた…メンバーの健司とともに、帰路につく。

両手に抱えた紙袋が、重たい。

自分たちのアルバムだから、捨てるわけにはいかなかった。

まったく減らない重さが、自分たちの限界のように感じ、恵子の気持ちは沈んでいった。