ここしばらく…渡り廊下に、あの子の姿を見ていない。

電車でも会うことはなくなった。

どうしたんだろうか。


心配気に、渡り廊下を見上げながら、リフティングをしていると、

ゆうのそばに、同じサッカー部の飯田がやってきた。

「ストーカーは、こなくなったな」

飯田も、渡り廊下を見上げていた。

「ストーカー?」

何のことか、ゆうにはわからない。

「いただろ?ちょっと前まで、ずっと見てるストーカーが…」

「誰のことだ?」

ゆうは、飯田を睨んだ。

「え?被害者が知らないのかよ!有名だぜ!お前が、ストーカーされてるって……!?」

ゆうは、飯田の襟を掴んだ。

「だ、誰が…」

「な、なんだよ!牧村!」


飯田は関係ない。だけど、彼女をストーカーと呼ぶのは、許せなかった。

飯田を突き放すと、ゆうはサッカーボールを蹴り、

渡り廊下の方へ歩いて行った。

(彼女がストーカーだと!)

まだ名前も知らなかった。

だけど、彼女と会うことが、ゆうの嬉しさだった。

笑顔も、照れた顔も……。

走りだすゆうの前に、

誰かが立っているのが、確認できた。

渡り廊下の下で。