黄昏に香る音色

明日香は話しだした。

昔、祖母が経営していたカフェに、あなたが、来られた時、

祖母が、このCDを手に入れたと。

恵子は…

CDを明日香から借りると、じっと無表情に見つめていた。

やがて、フッと笑うと、

CDを明日香に返した。




しばらく、無言が続く。

恵子は、徐に煙草を取り出すと、火を点けた。

煙がゆっくりと、店内に漂う。

「昔の話よ…」

恵子の指先、に挟まれた煙草の先…

赤い炎が、明日香には、暗いカウンターの中で、とても悲しげに思えた。