黄昏に香る音色

恵子の歌声に、絡みつくように、

啓介のサックスが、鳴る。

健司のトランペットは、

やさしく、包み込むようだったけど、

啓介のサックスは、包み込み、

それを、さらに、前へ押し出すような音。

(未来へ続く音だ!)

明日香は、恵子と啓介のそばで、音を聴きながら、

ただ涙した。

感動とうれしさ。

二人の音…。

そこに、

明日香が、目指すものがある気がした。

歌が終わると、明日香は、恵子に抱きついた。

「ママは、やっぱり特別よ」




その時、

店の扉が開き、誰かが店内に、入ってきた。