黄昏に香る音色

「よかったわ…とっても、素敵だった」

恵子は、明日香にウィンクし、

「歌手…香月明日香の、誕生祝いに、一曲…プレゼントしてあげる」

恵子の言葉に、

店中の人が驚き、

騒めく。

恵子が歌うなんて…。


恵子は、後ろを向き、

「大した演奏じゃなかったら、減給だからね」

阿部達を、冗談まじりで睨む。

「曲は、ジャズじゃないけど…キャロルキングのナチュラルウーマン」

KKに、歓声が沸き起こった。

恵子が、マイクの前に、立つと、

その隣に、

啓介が立った。

「音…必要だろ?」

啓介は、アルトサックスを掲げた。

「だけど、俺は、おやじのように、甘くはないぜ」

啓介の言葉に、

恵子は苦笑した。

「生意気ね」