黄昏に香る音色

家にあった一枚のCD。

カフェを経営していた祖母が、もっていたものだった。

KKとだけ書かれたシンプルな黒一色のアルバムは、

ジャズアルバムだった。



高校受験の間…何となくかけていたアルバムは、いつのまにか…

流れていなければ、落ち着かなくなる程の…なくてはならない音になっていた。


無事に受験が終わった…ある日。

明日香は、決心した。

CDのジャケットの裏に、載ってある電話番号を見つめながら。

アルバムの中にある1曲。

マイフーリッシュハート。

という曲に、心を奪われていた。


恋は、まるで夢のようだから…

夜と夢の間で迷わないで、

あたしの恋心。



恋の痛みなんて知らない。

ただ、夜と夢の間というイメージが、

明日香には、大好きな夕暮れを思わせた。




電話をしたら、長いコールの後…どこかの事務所に通じた。

電話に出た事務的な社員に、KKについて尋ねると、その事務員は知らず、

次にかわった社員が、少し考え込んだ後…もう解散したことを告げた。


だけど、

歌は聴けるかもしれない。

思い出した社員は、名簿をめくり、確認すると、

今、KKがいる場所を教えてくれた。