背中に回った腕。



壊れ物を扱うような力は、彼の不器用な優しさがこぼれてくるようだ。



私も怖々手を回し、彼のセーターを手を添えるように掴んだ。



首をおった彼の口元が私の耳に近づく。



さらさらとした髪が首にあたって少しくすぐったい。



「……ありがとう」



彼はそうささやいて、回した腕に力をこめた。



私の頬が一気に熱をもつ。



そうして私は、朝木葵の彼女になった。