大丈夫という言葉をよそに、奏太は私の家の近くまで送ってくれることになった。空はまだ夕焼けの茜色で、隣に奏太もいて、会わないとは思うが、家族に発見されたくないというちょっとびくびくした気持ちにもなった。

 「毎日、この景色を見てるのか。」

 ビックリして隣を見て、なんだか少しほっとした。なぜかは分からないけれども。

 「少しづつでいいんだ。」
 「なにが?」
 「少しづつ、晴香のこと、教えて。」

 ドキッとした。

 「晴香の知らない僕だってまだまだ沢山あるから。」
 
 そう言うと、奏太は私の手をすっと引いた。心の奥をぎゅっとつかまれたような、不思議な感覚があった。

 「都並センパイの指令をちゃんと全うせねば」
 「あはは。」

 顔を見合せて笑った。ドキドキする気持ちと一緒に、たくさん笑った。