さて、そろそろ限界だなと思い、音楽室のドアの方を見た。案の定、サックスコンビと、入らないよう止められたのか、昼練をしにきた泰一郎がそこにいた。やっぱりな。

 僕は晴香の様子が気になりながらも、音楽室のドアを開けた。

 「お待たせしました。ご協力ありがとう。」
 「奏太くん、奏太くん。」

 ワクワクした顔をしたヒヨコちゃんコンビと、やれやれという顔をした泰一郎がそこにいた。とりあえず、できる限りの笑顔を3人に向けておいた。

 言葉にしなくとも、伝わるものは伝わるってことで、晴香から聞きたかった言葉は、また落ち着いた時にでも聞くとすることにした。そりゃ、やっぱり、好きって、好きな彼女から聞けたら何より幸せ。

うっかりしていて、おっちょこちょいで、恥ずかしがり屋の晴香の隣を、ゆっくりゆっくり歩いていこう。