奏太は何も言わずに、ただ頷いていた。

 「で、ふと思い出したんだ。5月に入る手前ぐらいに、今の奏太にぱっと切り替わって、『あ、ホントは明るいんだ』って思ったなって。」
 「そうか…自分では普通にしてたつもりだったけど。」
 「あの時は分からなかったんだけど、拓人くんのお墓に行った後だったんじゃない?」

 奏太の顔を見たら、図星、と書いてあるような顔をしていた。

 「奏太、私でよければ、いてあげるから。たまには頼ってよ。仲間じゃん、私たちさ。」

 ちょっとクサイ言葉だけど、奏太の目を見て伝えた。

 話聞くとか、それぐらいしかできないけど、吐き出すことでラクになるならそれでいいかなって思った。誰かがいるって分かるだけで、私自身が強くなれた。奏太がいるから、大丈夫、何とかなるって思って、乗り越えられたこともあった。

 頼りないし、負担になるかもしれないけど、私がいるからって言葉で奏太がちょっとでもラクになれたらって思った。

 仲間として。友だちとして。それ以上でも以下でもなく。

 伝えたい言葉を言い終って、私はちょっとスッキリしたけれども、奏太の方は、なんだかまた考えごとをしているような、表現しづらい顔をしていた。

 「い、行こうか?お腹空いちゃったよ。」

 何だか恥ずかしくなって、座ったベンチを立とうとしたその時だった。

 奏太が私の動きを封じた。