こっそり近づけば、今なら気づかれないかなと思った。そっと奏太の後ろに周り、買ってきたお茶を首にくっつけてみた。予想以上だった。

 「うわっっ」
 「ビックリした?何か考えているみたいだったから、驚かせてみたくなっちゃった。奏太が気を抜いている時ってあんまり見かけないから。」
 「そうかな?」
 「喉乾いたでしょ?たまには気が利くんだな、私。」

 考えごとをしていた表情から、いつもの柔らかい表情の奏太に戻った。

 「ありがとう。」
 「どういたしまして。」

 奏太の座っていたベンチに私も座った。

 上手く言葉が見つからないけれども、何とかなるかな。本当は目を見て話すのがいいんだろうけど、うまく話せなくなりそうだったので、桜の木を見上げながら、奏太に思ったことを伝えてみることにした。

 「あのさ、奏太。」
 「ん?」
 「この前…入学式の演奏の後でさ、桜が苦手って言ってたじゃん。」
 「うん。」
 「去年どうしてたかなって思ったんだけど、思いだせなかった。奏太のこと、どういう印象だったかなって。4月の、部活入ったぐらいの頃、私ね、奏太ってちょっと怖いのかな、あまり会話とかしない方なのかなって思ってた。」