葉桜~late spring days

 バスを降りて、お墓への道を歩きながら、鎌田さんはニコニコしながら私にこう尋ねた。

 「どうして拓人の話をしたと思う?」
 「え?」
 「奏太も、話聞いていたら辛いはずなのに、止めなかった。さて、なぜでしょう?」

 気になっていたことを逆に聞かれて、何も言えなかった。

 奏太を見ると、なんだかどぎまぎした顔をしていた。ますます分からない。

 「答えはね、晴香ちゃんが拓人に似てるんだってさ。な、奏太。」

 意外な答えにビックリしたような、なんだかちょっとホッとしたような顔をして奏太が答えた。

 「そうなんだよ。…おっちょこちょいのとことか、うっかりしてるとこ」
 「え?何それ。ちょっと!」
 「ほら、着いたよ。」

 当たり前だけれども、なんの変哲もない、普通にお墓だった。

 「拓人、久しぶり。」
 「俺は1か月ぶり。命日にも来たから。」
 「えっと…」
 「拓人、同じ部の山田晴香。ま、知ってるか。そっから見えてるもんな。」
 「は…はじめまして。」
 「不思議な感じだよな、こんなとこであいさつするなんてな。」

 笑いながら、まずは墓石を磨いて、お花を入れ替えて、お線香をお供えして、手を合わせた。