お墓までは、バスで15分ほどかかる場所にあるそうだ。

 「中途半端になっちゃうと気になるだろうから、続き話そうか?」
 「え…えぇ、奏太が大丈夫であれば。」

 奏太は黙ってうなずいた。それを見て鎌田さんは話し始めた。

 「本人には言っていなかったし、奏太にも、その時は話さなかったんだけれども…」

 バスの中で、鎌田さんが拓人さんのことの続きを話してくれた。

 予後不良の腫瘍で、余命は持って半年と言われたこと。
 生きたいという意志と治療の効果が出て、一度は退院して、3人で出かけたりすることもできたこと。
 再入院したあとは、あっという間であったこと。
 鎌田さんの中学卒業を待っていたかのように、卒業式の翌々日に亡くなったこと。

 奏太や鎌田さんにどんな言葉をかけていいか分からなくて、ずっと「そうなんだ」と聞いていた。聞きながら私はここにいていいのか、なぜ私にこんな大事なことを話すのか、不思議な気持ちになっていた。

 「生きてくれるなら、自由なんていらなかった。拓人の生きている不自由のほうが欲しかった…ごめん、重たいよね。」
 「うん、確かに。重たいけど、大丈夫。話すとラクになることもあるだろうし。」

 でも何で私なの、とは聞けなかった。その話を私にするのは何でなんだろう。