だけど私は絶対に、
足を踏み出そうとはしなかった。
じっとアスファルトを眺めて
時間が過ぎるのをひたすら待つ。
たくさんの人が
通り過ぎていくのを、
色とりどりの靴を眺めて
見送った。
遠くでクラクションが鳴り、
信号が変わって
メロディが流れる。
途切れる事のない足音に紛れて、
そっとついた、
溜息が聞こえた。
「帰ろうか。」
言われて顔を上げると
遼平君は静かに笑ったけれど、
本当は物凄くがっかりしているのだと
私にはわかって、
何だかとても、申し訳ない気持ちになった。
亮介と、話してみようかなという
気持ちになった。


