「・・・どこいってたの?」
私の言葉に、亮介が数歩手前で
立ち止まる。
だけどそれは一瞬で、
私を無視して通り過ぎると、
門を入って玄関のドアに手をかける。
がん、と鈍い感触がして
初めて誰もいない家に気づいたようで、
舌打ちしながらポケットの鍵を探る。
学校が終わってからすぐに
亮介の家に来たけれど、
シュウ君もいないようだった。
日が暮れてからだいぶ経つ。
「煙草って、みつかったら
停学なんだね。」
ガチャガチャとポケットを
引っ掻き回していた亮介の手が、止まる。
「・・・退学のトコもあるんじゃねえ?
あと、みつかった時の状況とか?」
「ああ、テニス部の部室で
煙草、吸ってたって?
亮介、テニス部だっけ?」
「オトモダチがね。
あそぼーと思って
部室で待ってたんじゃねえの?」
亮介はやっと鍵を取り出して、
それでも一度も
顔を上げようとはしない。
「自分の事なのに覚えてないの?
現行犯じゃ、ないんだって?」
「知らね。」
私は門を開けて入ると、
ドアの前に立つ亮介の肩を引いて
顔をのぞきこんだ。


