…
亮介の謹慎処分は、
三日間だった。
薄情な事に、私が知ったのは
それが明けてからで、
ああ、だから最近
見かけなかったのか
とか、
間の抜けた事を思っていた。
「ごめんね、亮介がどこにいるか、知ってる?」
一年生の教室が並ぶ廊下で、
亮介とよく一緒にいる男の子を見つけて
声をかける。
私の事、覚えてるかな?と思いながら
のぞきこむようにして顔を見ると、
とても露骨に目を逸らされた。
「・・・今日、来てないですよ。」
「え、もう謹慎って解けたんだよね?」
「でも来てないです。
最近はずっと、変な時間に来たり帰ったり。」
「・・・そんな・・・。」
全然、知らなかった。
普段から亮介を不良だ不良だ、と
からかってはいても、
半分ふざけて言ってるだけで、
そこまで本気で心配はしていなかった。
私に対して向ける顔は、
子供の頃と少しも変わってなかったから。
「・・・大丈夫じゃないですか?
心配しなくても。」
「え?」
ぼそぼそと控えめな言葉に、
促すように笑って聞き返すと、
「だって、亮介って親戚に
この学校の経営者かなんかがいるんでしょ?
みんなも心配してないですよ。」
と、言われた。
私も亮介の親戚である事を
失念していたらしく、
私の顔色が変わったのを見て
ハッとして口をおさえる。
少し、わかった気がした。
「・・・そう。
でもそういう『心配』なら、私もしてないよ。」
嫌味なくらい、ニーッコリと笑いかけると
苦々しく顔をそむけられた。
「最後に一つ聞かせてほしいんだけど。
三日の謹慎処分って、軽すぎる?
それとも、重いと思った?」
今にも去りたそうに
ずっとソワソワしていた彼は、
ほとんど背を向けてから
振り向いて言った。
「さあ?ちょうどいいんじゃないですか?
他の奴だったら退学かもって思って、
ぞっとしたけど。」
その言葉で、
大体わかった気がした。


