「満たされた記憶もないけど、
 飢えた覚えもないから、
 
 注がれてもいつまでも、
   「それ」がわからずに、

そうやって、欲しがりもしないんだね――― 」


じっと、遼平君の瞳を見つめた。

透き通るように澄んだ、眼の奥の、底。


遼平君は、立ち止まって
静かに私を見ているけれど、

闇に慣れない視界の中では、

いくら凝らしても

彼のこころまでは、読み取れない。